★反原発? 再稼働に反対して電気代値上げを負担する覚悟はあるか★

反原発 , 原発停止 , 原発再稼働

 

◆原発停止により電気料金は高騰する → 貿易収支の赤字は拡大し日本経済は疲弊 → 代替策のない反原発は合理的か? | 原発の縮小は議論に値するが、いまある新しい原発を稼働させないのは国益を損ねる愚策◆

 

先日、北海道電力が冬の賞与ゼロを検討しているとのNEWSを見て、ひどく沈んだ気持ちになった。東日本大震災以降、原子力発電所が停止され、我々消費者へは電気料金の値上げという負担増を強いられている。そして更なる電気料金の値上げの理解を得るために、電力会社は自社のボーナスの削減やカットを検討しているという。国民は光熱費の負担に苦しみ、電力会社も事業運営に苦慮する。そして国として貿易収支が約1兆円の赤字という国富の流出に陥っている。つまりは、原発停止により国民も企業(労働者)も国もすべてが損をしている。このように考えると、原発停止によって全員が不幸になっているように考えられるが、何が起こっているのだろうか?

 

 

反原発が叫ばれているが、原発停止はリスクと費用便益を適切に検証した上での政策となっているのか? 個人的に反原発政策には甚だ疑問であるので、我が国のエネルギー政策の矛盾を思うままに綴りたいと思う。なお、私は原発を推奨しているのではなく、いまある新しい原発は合理的に稼働させるべきだという主張であることを先におことわりしておく。なお、中国が原発を推進している現在、国防の観点からも原子力開発は日本にとって不可欠であると考えるが、その観点はまた別の機会に記したい。

 

 

●反原発の理由とは? 原発停止と脱原発の理由と論拠に疑問あり●

 
まず最初に私が不思議に思っていること(意見)を表明しておこう。それは「本当に原発は危険なのか?」と、「日本は原発停止のコストを受け入れ続けるのか?」ということだ。TVをはじめとする日本の糞みたいなマスメディアは原発の不安ばかりを煽り、国民(消費者)が理解しておくべき情報を提供していないと私は考えている。だから国民は東日本大震災による福島第一原発の事故とその後の後手後手な対応だけを断片的に見て、「脱原発!」「再稼働反対!」と感情的になっているのではないか?

 

ここで改めて問いたい。東日本大震災の罪として原子力発電を一概に罰するのはやめるべきではないか? 確かに東日本大震災は多数の被災者を出した痛ましい大災害であり、福島第一原発はメルトダウンと放射能汚染を引き起こした。福島県民をはじめ原発被災者は気の毒などという言葉では片づけられないし、東京電力の旧経営陣をはじめ、関係者の責任を明確化するとともに適切な補償がなされるべきである。がしかし、事故を起こした福島原発と他の原発すべてを同列にして語るのは間違っていないか? と冷静に考えてみたいのである。

 

 

●「福島第一原発の大事故」→「原子力発電は危険(原発はコントロールできない)」→「原発の稼働はすべて止めてしまえ(原発廃止)」●

 
そもそも、反原発論者は、上記のような超短絡的な思考回路になっていることが多いように見受けられる。福島第一原発を教訓としながら安全で適切な既存原発運用に向けて建設的な議論をすべきではないか? 冷静で科学的な分析や、リスクとリターンを検証した結果として原発を停止するのであれば理解できる。がしかし、まともな議論は少なくともTVや新聞には掲載されていない。

 

そして、インターネットが普及したとはいえ、世論を形作るのはいまの時代もTVと新聞だ。2009年の民主党への政権交代の世論を形作った経緯と、その後の最悪な結果を思い出してみると良い。というわけで、反原発の世論が形成されている中、原発を擁護するのはいささか気が引けるが、既存のマスメディアへの反発として、少しでも多くの方に考えるきっかけを提供いたしたく、反原発に対する疑問を投げかけたい。

 

 

●電力会社の苦難 既得権益から規制される側へ●

 
ここで気の毒な電力会社の社員の現状から見ていこう。北海道電力の経営陣は2014年冬の賞与をカットする方針を示し、これから労働組合との交渉に入るという。原発停止による業績悪化が起こる前(2012年まで)は年間約160万円の賞与が支給されていた。東日本大震災が起こるまでは、電力会社といえばその事業の安定性や待遇の良さから学生の就職人気も高く優良企業の筆頭格であった。想像力を働かせてみて欲しい。自分たち(自社)に過失がないにも関わらず、ボーナスをカットされる気持ちを。

 

地域独占により競争もほとんどなく、既得権益を謳歌していた電力会社が現在苦境に強いられている。原発停止により火力発電にシフトしたことによる、発電費用(原材料の輸入コスト)の負担に耐えられなくなったのだ。一般企業であれば「原価が上がったので販売コストに反映します!」と宣言しそうなものであるが、国から経費削減を求められているので、電気料金を自由に値上げすることはできない。

 

これは実におかしな話である。他に電力を提供できる事業者がいないことは問題であるが、株式会社である以上、電力会社が値上げを実施するのであれば、利用者は値上げを受け入れる他にない。にも関わらず、従業員のボーナスをカットしたり、自社で資源高騰分を吸収し、業績を悪化させざるを得ないように国が干渉している。アメリカやヨーロッパなどのまっとうな資本主義自由市場社会であれば株主から訴訟を起される行為である。

 

現在の日本では「原子力発電を止めると電気代は上がる」この現実を直視せねばならない。現状は消費者への価格転嫁は最低限で済んでおり、電力会社や従業員が損失を被っているが、いつまでもこの防波堤が機能するはずがない。なお、電力会社の経営難は北海道電力に限った話ではなく、東京電力は企業の存続自体が危ぶまれているし、関西電力や九州電力は2013年と2014年のボーナスがカットされている。人材の流出も続いており、今後の日本の電力事業の未来にも暗雲が広がりつつある。優秀な人材が集まらない業界は間違いなく廃れていく。

 

 

●原発停止により貿易赤字が拡大 資源輸入コストが負担に●

 
次に電力会社の赤字の原因を発電コストおよび電力会社の経営状況から考察してみよう。2011年7月より日本の貿易収支は赤字になっている(→平成25年分貿易統計(速報)の概要)。これは、原発停止を抜きにしても、輸出額が伸びていないという理由も響いているが、貿易赤字の原因の大部分は発電のための資源輸入コストの増大である。火力発電のために石油や天然ガスを余計に輸入しなければならず、その資源価格は高値を維持し、円安が更なるコスト増の要因となっている。

 

2013年度の貿易収支は原発が停止していなければ輸入金額が4兆円程度少なかったとの分析もある(→貿易収支赤字の要因①~原発停止で4兆円赤字拡大)。つまり、原発停止により毎年4兆円の日本の資産が国外に流出していることになる。単純計算で国民一人当たり年間4万円の負担増である。がしかし、電気料金が上がったとはいえ、消費者がこのすべてを負担しているわけではない。請求書は消費者ではなく電力会社や国が補助金として負担しているのだ。結果2013年度は電力6社で経常赤字であったし、国の補助金の元は我々国民の税金である。

 

そう、日本は原発停止により国民の財産を海外に垂れ流している。これは紛れもない事実だ。自身の財布への影響が大きくないために痛みに気づいていないのかもしれないが、原発を稼働すれば余計なお金を払う必要はなくなる。この事実を話すと次の2点を指摘する方々がいる。「原子力発電のコストは安くない」「安全性・事故が起きた時のリスク」。果たしてこれは正しいのだろうか。

 

 

●原子力発電のコスト~原発は安い電力か?~再稼働の経済合理性●

 
まず断っておきたいのは、私は国や電力会社が公表(宣伝)している電力コストを信じているわけではないということである。つまり一般的な指標となっている原子力発電運用コスト「5.3円/kw」は正確な数字ではないと考えている。しかし、現行の原発は既に用地買収を含む莫大な建設コストや不透明な補助金を支払済であり、稼働にかかるコストは放射性廃棄物処理コストと廃炉コストを除けば、燃料コストと保守運用コストのみである。

 

日本には原子力発電所は全国17箇所48基(2014年1月時)あり、1原発あたり数千億円~数兆円のコストをかけて建設されている。原発の長所はその燃料費の安さ、つまりは運用コストの安さである。原発は初期に巨額投資は必要であるが、建設してしまえば運用コストはどの発電よりも安く、発電すればするほど事業者や消費者に恩恵をもたらす発電であるのだ。

 

日本のエネルギー政策の問題と異常な点は、この建設済かつ運用していた原発を科学的根拠なく停止していることだ。もう一度言おう。「国策として莫大な税金を投じて先行投資した原発という設備を明確な理由もなく止めている」。原発を動かさなければ、高い燃料代を海外に支払わなければならないことを反原発推進者は理解しているのだろうか?

 

 

●原発の安全性 原発は本当に危険なのか?●

 
経済合理性の話をすると、原発は危険だの一言で片づけられてしまう。ではいったい原発は何がどれくらい危険なのだろう? 現実の想定されるリスクに対して語られなければ戯言でしかない。だから原発は、どのようなリスク対してどこまでの安全の確保を目指すのか? を議論しなければならない。
 
次のように言い換えても良いだろう。想定されるリスクは何か? リスク発生時にクライシスをどこまで抑えるのか? 詳細は専門家の分析を参考にしてもらうとして、福島原発の被災をベースに想像力を働かせてみよう。1つ目は「どのようなリスクが想定されるか?」ということ。2つ目はその「リスクに対し事故防止策を策定すること」。リスクと対処策を整理してみよう。

 

≪原発リスク≫
・地震、津波、台風等の自然災害
・人為的ミス
・テロ行為

 

≪リスク対応策≫
・原子炉の損傷を防ぐ。つまり原子力発電が制御不能になることを防ぐ。
・安全に原発を停止する。つまり原発停止のための電力供給を絶やさない。
・原発を冷やす。つまり原発を冷やし続けるための水を共有する。

 

→インシデント発生時に原子力発電が制御不能になり、メルトダウンを起こしたり放射能汚染を引き起こすことを防ぐ!

 

非常に単純化したものであるが、自然災害や人為的ミス、テロの脅威から原発をどう守るか? が原子力発電の安定稼働の最重要ミッションであることに異論はないだろう。大切なのはリスクを認識し、それに対して確実な対処策を用意しておくことである。そのためにどのような具体的対策を打つべきか、コスト面を考慮しながら検討すべきであるのに、新規制基準をクリアする安全対策のためには2.2兆円かかるという。

 

まったくもって馬鹿げている。東日本大震災前まで平常稼働させていた原発を再稼働させるのに何故2.2兆円もの投資が必要なのか? リスクを再度見直し、適切な安全対策を実施することは大切なことであるが、湯水のように金を注ぎ込んでは、原発の一番の強みである安価な発電コストが意味をなさなくなる。繰り返すが、必要なのは想定外の事態を起こさないことと、緊急時に原発を安全に停止させることである。

 

 

●国益を第一優先したエネルギー政策/電力政策を実施するべき●

 
日本は1955年の原子力基本法を制定し、1963年の東海村のJPDRが初発電から国策として半世紀以上原子力発電に「ヒト・モノ・カネ」を注ぎ込んできた。これは資源を持たぬ日本において資源リスクを最小限にとどめるための国家の政策であったのだ。石油ショックを振り返るまでもなく、資源価格高騰時代に石油・天然ガスを輸入に頼る危険性やコスト負担は以前より増している。だからこそ、原発を造り続け全国17箇所48基の原子力発電所を稼働させて来たのだ。

 

それを1度の災害ですべてなかったことにするのはあまりにも稚拙な結論と言えるのではないか? そもそも、福島原発のメルトダウンを起こした理由は多岐に及んでいる。東電の経営者が原発の安全な停止(廃止)よりも今後の原発運用を目論んだ企業利益を重視したミスもあるし、当時の首相(菅直人)の有害な干渉があったため、対応が遅れてあのような大事故まで事が大きくなったのかもしれない。

 

であるならば、適切で入念な安全対策を準備しておけば、原発のリスクは限りなく低くなる可能性がある。そして、我々はいま以上の高い電気代を負担しなくて済むのである。家庭の電気代負担だけでなく、企業にとっても電気代値上げは大打撃であり、日本の産業競争力を損なう一因になりえる。数十年~数百年のに一度の自然災害を恐れ、災害に対する事故防止策に知恵を絞ることなく、日本の半世紀の原子力政策を捨てて、高い資源を輸入し続けるのか?

 

テレビに出演しているコメンテーターの言葉を鵜呑みにするのではなく、新聞記事も多面的な視点で検証し、また政治家の科白に根拠や先を見た政策は含まれているのかを問うてみる。原子力発電に留まらず、我々日本人ひとりひとりが考え、賢くならなければ少しずつ日本は駄目になる。大袈裟すぎるかは「民主党政権時代の日本の国力低下」や「朝日新聞の慰安婦記事ねつ造による日本の名誉棄損」を出すまでもないだろう。最後に「無知は罪だけれど、馬鹿は罪じゃないものね。馬鹿は罪じゃなくて、罰だもの」という西尾維新の科白を添えて、日本のまともなエネルギー政策の推進を願いたい。